恋の糸がほどける前に


机の上に乗ったサングラスは、セレブがお忍びでバカンスに出かけるときにつけるやつだ、なんて反射で考えてしまうような、結構な大きさのものだった。

ふたつあったうちのひとつを手にとってしげしげ眺めた後、水原を見れば、その顔はばっちり黒い眼鏡で半分近く隠されている。


「ていうか、すごいね。驚くほど似合わないよそれ」

「マジで?」


俺としては眼鏡とか結構似合う方だと思うんだけどなぁ、なんて言いながら、サングラスを外す。


うん、あの、こう言っちゃなんだけど、本当に驚くほど似合わないよ……!

たぶん眼鏡も似合わないから勘違いだよ、それ!


サングラスに着られてる感半端なかったよ。

着られてる、っていう表現が合ってるのかはわからないけど、そうとしか言えない。


「お前は似合いそうだよな」

「え」


水原の、あまりのサングラスの似合わなさに愕然としていると、不意に視界が更に暗くなった。


「っ、ちょっと!!」