「俺だってそんなん聞いてないし!!」
相変わらず震えている声で返された。
本当に頼りにならないなぁ、もう!!
「何があってもひとりでは逃げないでよ?置いていかないでよ?もしひとりで逃げたら、私一生水原のこと恨んでやるから!」
怖さを少しでも和らげようと、早口にまくしたてながら精一杯歩を進める。
戻るのはさすがに情けなさすぎるから、こうなったら少しでも早くゴールしてしまいたい。
暗さと怖さを誤魔化すように、無駄にぎゃあぎゃあ騒ぎながら、折り返し地点である最上階の音楽室に辿り着いた。
おそれていた、お化け的なものは今のところ登場していない。
西階段から上へあがり、東階段で1階まで下りるのがルートだから、うまくいけばどのペアも鉢合わせしないようにはなっている。
そうは言っても、こんなに上手くいくものなのね、と感心してしまうくらい、まるで誘導係がいるみたいに、本当に誰とも会わない。
結構早足で歩いたから、前を歩く芽美と結衣ちゃんのペアに追い付いても不思議じゃないのに。
というか、むしろ追い付いてほしかったのに。
大勢だったら怖さも半減するのに!
「あるもの、ってこれか?」
音楽室に入って、すぐ目の前にあった机の上に乗ったものを見た水原が、それを持ちあげてそう言った。


