花「ふぅ....」



あれからため息しか出てこない。



桂さんは何をお考えなのか。



私を利用しているのか....



愛など....



信じられない。



いつだって男は口だけ。



腹の立つもの。



そんなことばかりを考えていると



思わず支度の手が止まる。



禿「太夫‼︎まだ化粧も終わってへんやないですか‼︎」



花「寧々....」



自分が養っている禿の寧々は



置屋の女将さんよりも口煩い。



花「行きたくないんよ。」



禿「あきませんよ‼︎みんな待っとりやす。久々に姐さんの道中やから張り切っとるんや‼︎はよ見たいわ‼︎」



自分のこと以上に興奮して騒ぎ立てる



寧々を見て笑みを浮かべる。



花「分かったから。今日の旦那は誰やった?さっき聞きそびれたわ。」



すると寧々は苦い顔をして



思い口を開いた。



禿「壬生浪士組どす....」



カタン.....



思わず手に持っていた紅筆を落とす。



花「そう。ほんなら寧々は座敷の外で待っといて。」



禿「そんな‼︎危ないお侍さんの中に姐さんだけなんてあかんわ‼︎」



顔を真っ赤にしてあたふたする寧々を



なんとか収めると打掛を手に振り返る。



花「ほな、道中行きましょか。」