いつでも王子様




半ば叫ぶような大声は、薫だけでなく、近くで夜空を見上げていた人たちにも聞こえたようで、たくさんの視線が私たちに注がれた。

「な、なにを。急に言い出すんだ……」

さすがに焦ったのか、薫は私を見下ろしながらほんの少し顔を赤くした。

ようやく薫の気持ちをつかんだような気がして、私は妙にうきうきした。

してやったり。

けれど、そんな私の気持ちを知ってか知らずかすぐに冷静になり、にやりと笑った薫は、まるで周囲に聞かせるような大声で叫んだ。

「俺も、璃乃の王子様になれて嬉しい。ようやく、手の届かなかったお姫様が俺のものになったんだ。愛してるぞ」

言い終わるや否や私を両手で抱きしめ、そして。

素早く私の体を離したと思った途端、私が抵抗する間もなく。

唇を重ねてきた。

「ちょ、ちょっと……ん……」

私の後頭部を固定して、何度も深い口づけを落としてくる薫は、くすくす笑いながらも私を離そうとしなくて。

周囲からのからかい声や、ヒューヒューという声にも構うことなく。

「愛してるよ」

と何度も繰り返した。

必死で逃げようとしていた私も、その力には敵わないと悟り。

もう、誰に見られてもいいや、と思った瞬間、薫に負けない力で抱き返した。

「私、薫のことを……」

その瞬間、ひときわ大きな花火が夜空に広がり、心に響く大きな音とともに、私たちを祝福してくれた。




【完】