神社に近づくにつれて、周囲を歩く人の数も増え、自然と寄り添い歩いている。
気づけば私の肩を抱き寄せ、人込みから私を守るように歩いている薫。
私は薫の腰に手を回し、ぎゅっとその暖かさを感じている。
ちょうど耳元に感じるのは規則正しい薫の鼓動だ。
この密着している体勢にも平静を保っているその鼓動に、ほんの少し悔しさを感じた。
薫と一緒にいると、私はいつもどきどきしているのに、薫は私といても何の変化もない。
「悔しいな」
ぽつりとつぶやいた私の声に反応した薫は、私を見下ろした。
「どうした?」
「あのね、」
“悔しい”
と言いたくて口を開いたと同時に、大きな音が響き渡った。
一瞬で明るくなった夜空。
周囲の人々から広がる感嘆の声。
大きな花火が夜空に咲いた。
「きれい……」
思わず立ち止まって見上げた夜空に何発もの大きな花が咲き乱れる。
空気を震わせる大きな音と、その場を昼のように明るく照らす火の泉。
薫は私の肩をさらに抱き寄せる。
そして、私もその胸にもたれかかった。
「さっき、何か言いかけてなかったか?」
花火の音に負けない大きな声で私の耳元にささやく薫は、絶えず輝いている夜空から視線を外さない。
その横顔を見上げながら、私も花火に負けない声で。
「ようやく私のものになった、この王子様が大好きだって、言おうとしたの」

