いつでも王子様




そして、その合間に話を続けてくれた。

『俺は、とりあえず璃乃と同じ大学に行くって決めてたんだ。
俺一人に何の価値もないなら、四人分の人生を背負っていくなんて無理だから。
それなら璃乃の側で生きていたいって……この時も、俺は璃乃に逃げてたんだ。
自分の不甲斐なさや将来への不安から目をそらして、ただ璃乃を求めてたけど。
母さんには俺のそんな気持ちはお見通しでさ。
意味を取り違えてるって言って説教された。
四人分生きるってのは、俺が俺の幸せのために地に足をつけて生きることだって。璃乃にすがって人生を決めるなんて男らしくないし、息子だとは思えないってさ。
母さんの流産の原因は、今の医学でもどうしようもないことらしいんだ。はっきりとした理由がわかってるわけでもない。だけど、その原因を探りたくて、俺は遺伝子の勉強をしようって決めたんだ。だから、今の大学を選んだ』

どこか誇らしげに話す薫の声は、なんの迷いもなくてすっきりとしていた。

私と一緒の大学に入りたい気持ちは大きかったけれど、それ以上に自分の生まれた経緯を探ってみたいと、そう思ったらしい。

そしてできれば。

薫のお母さんが味わった悲しみを、この先誰も味わうことがないような研究ができれば。

そう話す薫の顔は、照れくさそうだった。

私に甘い言葉をつぶやくときには全然照れないくせに、と思ったことは口にしなかったけれど、今の大学を選んだことに満足しているとつぶやいた顔は、とても輝いていて。

悔しいから言わないけれど、竜也お兄ちゃん以上に素敵だった。