薫が私と一緒に暮らしたいと両親に頭を下げたのは、私が大学に合格した頃らしい。
別々の高校に通うことになった時からずっと、大学は私と同じところに行こうと決めて勉強に励んでいた薫。
当時はまだ将来何がしたいという具体的な展望も何もなく、それなら私と同じ大学に入学することを高校三年間の目標しようと決めた……と恥ずかしげもなく教えてくれた。
ただ、私が医学部を目指すだろうということはわかっていたせいか、どの医学部を受験するにしても合格できるよう一年生の頃から猛勉強をし、模試で叩きだす成績は、いつも全国順位で一桁をキープしていたというのには驚いた。
それなら今通っている大学よりももっとランクが高い大学にも入学できたはずなのに。
それに、私と同じ大学を受験することすらしなかったのはどうしてだろうかと不思議に思った。
そんな私の思いを薫は簡単に読み取り、「一緒の大学に行きたいって気持ちは強かったんだけどな」と苦しげに言いながらも、どこかすっきりした顔を見せてくれた。
そして聞かされたのは。
これまで全然気づくことができなかった薫の悲しい思いだった。
「別に今更落ち込むこともないし、俺も両親もちゃんと折り合いをつけてるから璃乃は黙って聞いてくれるだけでいいから」
そう前置きして教えてくれたこと。
それは、薫の誕生に関するものだった。

