いつでも王子様




そんなことを考えていると、私の後ろから雑誌を覗き込んだ薫が呟いた。

「竜也さん、5年後の万博の設計担当として参加するんだな。その記事が載ってたから、俺はまた置いていかれたって……差をつけられたって焦ってさ、さっきは璃乃を押し倒してしまったんだ。悪い。びっくりしただろう?」

「あ、ううん……。大丈夫だけど、その。私はその、慣れてないっていうか、初めてだからどうしていいかわかんなくて」

あわあわと焦った声をあげると、薫は嬉しそうに笑い私を抱きしめた。

「中学の頃と違って、今の俺は将来目指すものもちゃんとあるし、璃乃を養っていけるための努力もしているつもりだったのに、この記事を見たら、やっぱり自分はまだまだだなって、ちょっと落ち込んで、璃乃を襲ってしまった。まあ、未遂で済んで良かったけど……俺は今でも璃乃を抱きたいって思ってるから覚悟しておけよ」

「そんな、ろ、露骨なことを……っ」

「くくっ。まあ、璃乃の気持ちは大切にするけど、俺はもう我慢できないから。
璃乃の両親と俺の両親を説得してようやく一緒に暮らせるようになって。惚れた女がこんなに近くにいて手を出さなかった俺をほめてくれ」

「両親を説得って?え?もしかして」

今薫が口にしたことが引っかかって首を傾げた。

説得……って、もしかして、この同居は初めから薫が仕組んでいたこと?

双方の両親もそのことを初めから了解していたってことなの?

はっと振り返り薫に視線を投げると、何かを企んでいるような視線とぶつかった。

私の体を包み、まるで赤ちゃんを落ち着かせるように何度か体を揺らしながらくすくすと笑っている。