「浩介先輩って呼んでいいですか?」


「あ、うん。

なんでもいいよ」


「じゃあ浩介先輩で。

あたしのことはすきに呼んでください」


すきにって言われても。


でも名字で呼ぶのはなぜか嫌いで


「香歩」


心で呟いたはずなのに声に出ていた。


「なんかくすぐったいな。

でも香歩がいい」


「じゃあ香歩にする」


香歩は照れたように笑った。


それからは他愛ない話で盛り上がった。


香歩の友達の話や、
涼がバカやったときの話など
前から知っていたかのように
香歩の前では自然でいられた。