「とにかく亜理紗のことはボクに任せて。
今、あちこち手をまわして亜理紗を探してるんだけど、なかなかみつからないんだ。
携帯にも出ないだろ?」

「え…?あぁ、確かにそうだ。
何度かけても一向に出ない。」

マイケルの言葉で、俺は物思いから覚めた。
話題が変わったことで、どこか救われた想いも感じた。



「亜理紗らしいね。
それとも、事務所の方針か…
とにかく、カズ、ややこしくなるから亜理紗にはもう電話しないで。
ボクが責任を持ってうまく解決するから。」

「何言ってるんだ。
今回のことは俺の問題だ。
だから、俺が……」

「だめだめ。
カズが出しゃばるとうまくいくものもいかなくなるよ。
出来るだけ早く、そして穏便に解決しなきゃならないから。
こういうことは却って第三者が話した方がうまくいくもんなんだよ。」

「そうそう。」

アッシュが大袈裟に首を動かし、マイケルに相槌を打つ。
まるで俺ではうまく解決出来ないと言われているようで、俺はあまり良い気はしなかった。



「野々村さん、申し訳ないんですが、二人のこと、少しの間だけどうぞよろしくお願いします。
これは、当座のお金です。」

「わ、私、そんなもの…」

野々村さんは、マイケルが差し出した封筒を両手で押し返そうとした。



「お願いですから受け取って下さい。
今は、あなたしか頼る人がいないんです。
彼らは外に出られないから、もしかしたらあなたにちょっとした連絡を頼むこともあるかもしれませんし…」

「そうですよ、野々村さん。
そうじゃなきゃ俺達もここに居辛くなります。」

野々村さんは戸惑っているようだったが、俺達の説得に負け、金をおさめてくれた。
それにしても、本当にマイケルは何から何までよく気が付く。
さしあたり必要なものは全部持って来てくれたし、お金のことまで…
そんなマイケルだから、彼に頼んでおけば、亜理紗のこともうまく解決するかもしれない。
だけど、つまらないプライドなのかもしれないが、俺よりもずっと年下の彼にすべてを委ねるのはやはり気が進まない。
とはいっても、俺が行動してこじれてもっと大きな事になってしまったら、周りの皆に迷惑がかかることもよくわかっている。



(……どうしたものか…)



俺の心の中はかき乱れ、さらに重く沈みこんだ。