「自業自得だな!」

「最初からあの娘はヤバイって思ってたよ。」

亜理紗とのことを話すと、マイケルとアッシュに思いっきり笑われた。



「……酷いな。
俺は真剣に悩んでるっていうのに…」

「よく言うよ。
真剣に悩んでるなら、彼女を置いてさっさと帰って来たりしないだろ。
……でも、一体、なんでそんな所借りてたんだよ。」

「それは…だから、その…
野々村さんとの打ち合わせのために…」

「彼女とはメールでやりとりしてたんじゃないの?」

「それはそうだけど…だから、その…なんだ。
……ほ、ほら、今、エッセイの連載の話も来てるだろ?
それで、文章を書くコツみたいなものを教わってたんだ。
うん、そうなんだ。」

俺は、咄嗟にそんなことを言って誤魔化した。
エッセイの話が来たのは割りと前の話だし、忙しいと言ってすでに断っているが、マイケル達は俺のスケジュールをすべて把握しているわけではないのだから。



「なるほどね。
彼女はライターだから、そういうことならお手のものだもんな。
でも、わざわざそんな所を借りなくても、ここでも事務所でも出来るんじゃないのか?」

「俺にだってプライドってもんがある。
出来ることなら、誰にも知られたくなかったんだ。」

「カズは、おかしなことを気にするんだな。」

「俺はおまえ達とは違って日本人だからな。」

マイケルやアッシュとはこうして一緒に住んでもいるし、彼らはスピリチュアルな世界のことを信じてもいる。
野々村さんに依頼したことを隠すのは水臭いことかもしれないが、それを話すということは、野々村さんの秘密を話すことにも繋がる。
だから、言えなかった。



「それにしても厄介だな。」

「なにが?」

「何がって、亜理紗のことだよ。
彼女、カズのことをかなり気に入ってるみたいだから、きっと今後もしつこく付きまとわれるぞ。」

アッシュはにやにやと笑いながら、そんなことを言った。



「俺は、亜理紗をほったらかして帰って来たんだぞ。
それでも諦めないだろうか?
そんな冷たい男なんて、嫌いになるんじゃないか?」

「……違うな。
彼女はそのくらいのことで諦めるような女じゃないよ。
きっと逆に燃えるタイプだ。
これからはきっと今以上にカズにアタックしてくるよ。
楽しみだなぁ…」

「アッシュ!」

まさかとは思いつつも、アッシュの言葉が頭に残って気が晴れないまま、俺は眠りに就いた。