「ひかり…僕は構わないよ。
ひかりが僕のことを本気で愛してくれなくても…
……それでも僕はひかりのことを好きな気持ちは変わらない。」

「雅樹君……」

「……シュウさんも酷いよ。
ひかりがいるのに、浮気するなんて。
僕はそんなこと絶対にしない。
僕は遊びなんかでそんなこと絶対に出来ないよ。」

いつもは穏やかな雅樹君が、珍しく厳しい表情を見せた。



「……仕方ないよ。
シュウは昔っからよくモテるから…」



(あ……)



「ご、ごめんね!
何も雅樹君がモテないってわけじゃないよ。
そ、その…シュウは特別モテるってことだから。」

考えなしに失礼なことを言ってしまったことに気付いて、私は慌てて弁解した。



「確かに、僕はモテるタイプじゃないけど…
でも、そういうのはモテるとかモテないとかは関係ないと思うんだ。
要はその人の性格っていうのか、人間性みたいなもんじゃないかと思うよ。」

「……人間性…」

シュウのことをそんな風に言われると、なんだか複雑な気持ちになってしまった。
雅樹君が私のために怒ってくれてるのはよくわかるけど…
シュウは決して悪い人じゃない。
そりゃあちょっときつかったり強引な所はあるけど、「人間性」なんて言葉を出されると、まるでもっとずっと悪い人みたいに聞こえてしまう。
女の子にも調子良く答えるけど、ただそれだけのことで、浮気みたいなことをするのはここあちゃんが初めてだし……それに、そんなことになったのは私のせいもある。
私が、シュウの欲求に応えないから悪いんだ…
それなのに、シュウが悪く言われるなんて…



「雅樹君…シュウが悪いんじゃないんだ。
本当に悪いのは実は…私なの…」

黙っているのがたまらなくなって、恥ずかしかったけど私は雅樹君にすべてをぶちまけた。
私はエッチが好きじゃないってことを…



「……そうだったの。
男に慣れたいっていうのはそういうことだったんだ…」

「あ、ご、誤解しないで!
それだけじゃないから!
私は、本当に今まで異性の友達は一人もいなかったし、メル友やネットの友達さえいなかったから。
だから、もっと慣れて、それで……」

「……わかったよ。
じゃあ、僕を実験台に使ってよ。
僕の協力で、ひかりがシュウさんとうまくいくようになるのなら…
……僕はそれで構わないよ。」

そう言った雅樹君の顔に寂しげな微笑が浮かんだ。