「雅樹君…
私ね…雅樹君に隠してたことがあるの…」

「隠してたこと…?」

私は頷き、そして、ゆっくりと話し始めた。
シュウとここあちゃんのこと…
私は、この先もシュウとうまくやっていきたいから、男の人に慣れたくてそれで雅樹君に声をかけたこと…



「……そうだったの…
そうだよね……
そんな理由でもなけりゃ、ひかりが僕みたいに何の取り柄もない男に声をかけるはずがないよね。」

「違うの!そうじゃない!
雅樹君、ちゃんと聞いて!
そ…そりゃあ、確かに最初は特別な感情はなかった。
でもね…雅樹君と知り合ってから、私、本当に毎日が楽しくて…
それに、雅樹君が私を好きになってくれたことが本当に嬉しくて…
だって、私も今までコンプレックスの固まりだったんだもん。
シュウとつきあってるんだって、それは設定だからだもん。
私は、設定がなかったら、シュウなんかとつきあえるような女じゃない。
でも…それでも、私はシュウのことが好きで…」

「ひかり…そんなこと本気で考えてたの?
信じられないよ。
ひかりは可愛いし、面白いし優しいし、誰からも好かれるタイプじゃない。」

「ううん。
私ね、ちょっと前までもっと太ってたの。
それに、おしゃれにも全然気遣ってなくて、ジャージにすっぴんにぼさぼさ頭みたいな感じで、見た目も、モロ、オタクだったんだ。
それにね、暗いし人としゃべるのがすごく苦手で…
しゃべれるようになったきっかけはやっぱりシュウだったんだ。
でも、まだやっぱり今でも人見知りはある方だと思うよ。
だけど……雅樹君は優しくて話しやすいから。」

雅樹君は、不思議そうに私の顔をじっとみつめた。



「信じられないなぁ。
今のひかりはこんなに明るいし、元気なのに…」

「そう言ってもらえると嬉しいけど…
でも、そうなれたのもやっぱりシュウのおかげだと思う。
私ね…こっちに来てからしばらくはものすごく辛くて…」

当時のことを話しかけた時、私はあらためてシュウが私にとってどれほど大切な人かってことを思い出した。
自分でも感情のコントロールが全然出来なくなって、もう死んでしまいたいとまで思ってたあの頃…シュウがいてくれなかったら、私は本当にどうなっていたことか…

私はそんなことを考えながら、シュウに以前言われた言葉を思い出していた。



「設定だってなんだって、今、俺がひかりのことを好きだって気持ちは嘘じゃない。」



それはきっと真実だと思う。
そうじゃなきゃ、あんなに尽くしてくれるはずない。
でも、そのことがありがたく思える反面、却って負担にも思えたり、寂しく思えたり…

考えれば考える程、私の心は混乱していった。