(私は遊びの恋をするつもりだったのに…
シュウとこれからもっと良い関係を築くために、もっと男の人に慣れてちょっとしたことでは動揺しなくなるように…
そのために雅樹君を誘ったはずだったのに…)



「やった!
僕の勝ちだ!」

「……え!?」



ぼーっと考え事をしているうちに、テレビの画面は変わり、雅樹君が嬉しそうに笑ってた。



「……どうしたの、ひかり。
ぼーっとして…」

「なんでもないよ。」

「酷いな…僕と一緒にいるのに、またシュウさんの事考えてたんでしょ?」

「違うってば!」

「じゃ…チューして。」

そう言って、雅樹君は少しおどけて唇を突き出した。



「……もう…雅樹君ったら……」

その仕草があまりに可愛くて、私は雅樹君に言われるままに唇を重ねる。
以前ならきっと自分からチューするなんてこと、出来なかった。
こういうことが自然に出来るようになったのも雅樹君のおかげ…



(あ……)



雅樹君の腕が私の身体を強く抱き締め、そして唐突に押し倒した。



「ま、雅樹君!
だ、だめだってば~…」

私は、気まずさを誤魔化すためにへらへらと作り笑いをして、雅樹君の身体をゆっくりと押し戻す。



「……ひかり、どうしてもだめ?
僕…こんなにひかりのことが好きなのに…」

「……雅樹君……ごめん。
もう少し……もう少しだけ待って……」

雅樹君は、寂しそうな目をして私から顔を背けた。



「本当にごめんね…」

私は上体を起こし、俯いたまま、小さな声で呟いた。



「……僕の方こそごめん…
わかってるのに……
ひかりにはシュウさんがいて…
ひかりが僕のことなんて本気で愛してくれる筈なんてないってことは、わかってるのに…」

雅樹君はそう言うと、悔しそうにベッドを拳で叩きつけた。



「雅樹君……」



私は雅樹君のその姿を見て、罪悪感でいっぱいになってしまった。
今までにも何度か言い出したい衝動にかられたことはあったけど、それを言ってしまうときっともう雅樹君は私のことを嫌いになるはず。
それが怖くて言い出せなかった。
でも、もう黙ってはいられない。
こんなにも本気で私のことを愛してくれてる雅樹君を騙すようなことは出来ない。
私は、すべてをぶちまけることに決めた。
それが、最悪の結果に繋がるかもしれないことは十分承知の上で。