「こんにちは!」

「おぉ。またおまえさん達か。
さぁさ、お入り。」

私達を出迎えてくれたのは、長く白い髭をはやした小柄なおじいさん。
長いローブ風の衣類を身に付け、杖を持っている。
私達が住んでるのは、私のいた世界とほとんど変わらない近代的な街並みで、シュウの家はおしゃれなマンションの最上階。
だけど、このおじいさんの家は町から少しはずれた所にある森の中の一軒家。
そもそもこんな場所に森があるのがおかしいんだけど、おじいさんの姿も他の住人とは明らかに違ってて、明らかに浮いている。
それはすべて、私が「賢者」なんて者を作り出したせいなんだけど…



「今、お茶をいれてくるからな。」

賢者のおじいさんは私達を居間に残し、とことこと台所へ歩いて行った。



明らかに不自然な設定とは言え、このおじいさんがいてくれたおかげで私はこの世界のことをいろいろと教えてもらうことが出来た。
シュウもこの世界の住人でありながら、まだ住んでる時間が少ないせいなのかよくわかってないこともたくさんあったようで、おじいさんの話を聞くのをけっこう楽しみにしている。



まず、私がここに来て驚いたのは意外とたくさんの人がいたこと。
私はそんなにたくさんのキャラを作った覚えはなかったから不思議に思ったのだけど、どこかで「この町に住む大勢の人々が…」って文章があったらしい。
するとこの世界には大勢の人々が出来るようだ。
名前もないけど、それなりに皆普通に存在してる。
でも、普通じゃない人達もいた。
俯いて足を引きずるように歩くその人は、いかにも精気がなく、向こう側が透けてるように見えて私はぞっとした。
言ってみれば幽霊みたいな感じなんだけど、私は霊感が強いわけでもなんでもないから、そんなものが見えるはずはない。
シュウに聞いてみると、シュウはあっさりとあれは「ゴースト」だと答えた。
ゴーストってことは…やっぱり幽霊…?
私はこっちに来て、いきなり霊能力者になってしまったのか!?って、びっくりしたけど、
でも、そうじゃなかった。



「ゴーストって言うのはな。
作者が作ったもののそれを削除してしまったキャラクターなんだ。
せっかくこの世界に誕生したのに、突然、その存在を消されてしまった彼らには行く場所がない。
彼らはもう話すことも何も出来ず、ただ、この世界を寂しくさ迷ってるんだ…」



シュウの話はとてもショックだった。
なぜなら私にもそんなキャラがいたから。
作ってはみたもののその後の物語が思いつかず、面倒臭くなって削除してしまったキャラ達がどこかでこんな風にさ迷っているのかと思うと、私は胸が締めつけられる想いだった。