「……ひかり…また出掛けるのか?」

「う、うん、ちょっとね。」

「最近、やけによく出掛けるんだな。
賢者の爺さんも、おまえが全然来ないから寂しがってたぞ。」

「あ……あぁ、おじいさんの所にはそのうち遊びに行くよ。」

「……今日も一人で行くのか?」

「え……まぁね。
なんか…一人でうろうろする癖がついちゃって…」

「そうか……じゃあ、気をつけてな。」

「うん…なるべく早く帰って来るね。」



ひかりは、最近ますますよく出掛けるようになった。
それも、いつも一人でだ。
それだけならまだしも、以前と比べて服装にも気を配るようになったし、化粧もするようになっていた。
それが意味するものは……「男」だ。
まさに、最近のひかりの様子は恋する乙女そのものなんだが、その反面、ひかりが俺以外の男を好きになるということが俺はまだどこか信じられない。
ひかりは昔から俺にぞっこんで、しかも、今までに俺以外の男とはつきあったことがないと言っていた。
つきあうどころか、友達もいなかったと。
それが嘘でないことは、一緒にいてもよくわかった。
そんなひかりが、突然、誰かを好きなったりするだろうか?
こっちに来てからも俺達は始終一緒にいた。
誰かと知り合うことなんて、無かった筈だ。



(でも……)



一人で出掛けるようになってから、誰かと知り合ったということは考えられる。
とはいっても、この世界に俺以上ひかりを夢中にさせられる男がいるとは、俺にはやはり信じられない。







「なぁ、どう思う?
正直に言ってくれよ。」

俺はたまらなく不安になって、賢者の元を訪ねた。



「……ないとは言えんじゃろうな。」

「マジかよ!?」

「前にも言うたじゃろう?
ひかりはこの世界の設定に干渉されない自分の意志を持っておる。
本来ならば、主人公が作者が書きもせんのに、勝手に誰かを好きになることなんてないが、ひかりは自分の意志でそうすることも出来るんじゃからな。」

「だ、だけど、この世界に俺よりカッコ良くて優れた奴がいるか!?」

「……シュウよ。
おまえさんらしくないことを言うんじゃな。
好きになるのは、何も容姿や才能に限ったことではないではないか。
とてもつまらない男にひかれることだって、女にはよくあることじゃ。
……そもそも、ひかりとおまえさんとは釣り合わないカップルだったとも言える。
ここあちゃんとハヤト君みたいな美男美女カップルとは少し違うからのう。
ひかりもそのことを引け目に感じてたじゃろうし、もしかしたら、居心地の良い相手と巡り合ってしまったのかもしれんのう。」

淡々と話す賢者に、俺は苛立ちを感じた。