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「シュウ、今日はどこに行こうか?」

「う~ん…どこでも良いよ。
ひかりに任せる。」

「もぅ~!
いつもそんなことばっかり言って!
たまにはシュウが決めてよ!」

そう言って頬を膨らませると、シュウはどこか照れ臭そうに笑った。
相変わらずシュウの笑顔はかっこ良くて…思わず私の鼻の下は伸びてしまう。



あれからもうずいぶんと時は流れたと思うけど、私は少しも変わることなくシュウにぞっこんだった。
でも、こんな風に穏やかに過ごせるようになるまでには、いろいろと苦労もあって…ちょっと前まではこんなごく普通のことが出来なくなっていた。



こっちに着いてからはなにしろ毎日が驚きの連続で、私は今までとは全く違うこの世界のことが怖くてたまらず、毎日、泣いてばかりいた。
とんでもない世界に来てしまったことへの後悔…
現実では私がいなくなったことで皆がどうなってるのかっていう不安…
もう二度と元の世界には戻れないと思うと、悲しくて寂しくて本当にどうにかなってしまいそうだった。
まず戸惑ったのは、時間がわからないこと。
私が時間や月日の設定をほとんど書いてなかったせいだと思うけど、この世界の時はとてもぼんやりとしてる。
毎週決まったテレビ番組があるわけでもなければ、今が昼か夜なのかもよくわからない。
私やシュウが夜だと思えばあたりは急に暗くなる、そうでなければずっと明るいままだ。
眠いのかどうかもよくわからないし、そんな非現実的なことが私には酷く恐ろしいものに感じられた。
良く言えば、ここは魔法の世界なのかもしれない。
だけど、私には狂気の世界のように感じられて、楽しいなんてとても思えなかった。
そんな時、私を支えてくれたのはやっぱりシュウで…
きっと、シュウがいなかったら、私は頭がおかしくなってるか……もしかしたら、自分で命を断ってたかもしれない…