ど、どうしよう…
雅樹君に告白されてしまった。
確かに良い雰囲気にはなりつつあると思ってたけど、早いよ。
まだ、心の準備が出来てないよ。



「ひかり…だめ?
僕がひかりのことを好きになっちゃ、迷惑…?」

「迷惑だなんてそんな…」



(あ……)



「雅樹君!雅樹君には、私のことを好きになる設定なんてなかったよね!?
それなのに、どうして…?」

「そりゃあ、ひかりと会ってるうちに好きになったからに決まってるじゃない。
僕達みたいな名もなきキャラクターは、どういうことをしようとほぼ自由なんだ。
だから、誰かを好きになることだってあるよ。
引っ越したり、病気で死んでしまう事だってあるんだ。
だって、僕達にどんなことが起きたって物語には何の支障もおよぼさないんだもん。
その代わり、僕達みたいなキャラは主人公と接触する事もほとんどないはずなんだ。
それがちょっと不思議ではあるけど、でも、ひかりにはシュウさんがいるし、ひかりが僕のことなんか相手にすることなんてない。
だから、きっと僕はひかりと出会えたんだね。」



(雅樹君は設定じゃなくて…私と会ってるうちに私を好きになってくれた…)



そのことが、私にはとても嬉しく感じられた。
だって…初めてなんだもん。
男の人に好きだって言われたのはシュウが初めてだけど、それは設定で決まってたことだから。
でも、雅樹君は、設定なんかじゃなくて、本当に私のことを…こんな何の取り柄もない私のことを好きだって言ってくれた……




「ま…雅樹君…あ、ありがとう……」

「ひ、ひかり、どうしたの?
どうして泣いてるの!?」

「嬉しいんだもん……
ものすごく嬉しいんだもん…」

私は、雅樹君の胸に顔を埋めた。
シュウよりずっと華奢なその胸は、シュウと同じように温かい。



(あぁ…どうしよう…
私、本当に雅樹君のことが好きになっちゃうかも……)