「なぁ、じいさん。
俺…前から気になってたんだけどさ。
俺が、ひかりの世界に行けたのは、カリスタリュギュウス流星群の奇蹟みたいなもんだろ?
でも、カリスタリュギュウス流星群からもう何ヶ月も経ってるのに、なんで今度はこっちに帰って来られたんだ?
そこんとこがよくわからないんだ。」

「それはじゃな…
わしが考えるに、おまえさん自体が奇蹟だからじゃと思うんじゃ。」

「……俺自体が奇蹟…?」

じいさんは神妙な顔つきで頷いた。



「おまえさんは以前教えてくれたな。
カリスタリュギュウスのあの日、ひかりの世界で、ある男の亡くなった奥さんが生き返ったという話を。
その奇蹟とおまえさんの奇蹟の違い…それは、元々その世界にあったものとそうでないもの…ということじゃな。
奥さんは亡くなってしまったが、元はその世界に確実に存在していた者じゃ。
しかし、おまえさんは違う。
おまえさんは元々その世界に実体として存在していた者ではない。
だが、物語としては存在していた。
ややこしいんじゃが、おそらくそのことが何か関係しておるんじゃなかろうかと思う。
どちらの世界にもいるにはいたが定着はしておらず、カリスタリュギュウスのエネルギーはおまえさんの中で消化しきれていなかったのではないかと…つまりおまえさんの存在自体がカリスタリュギュウスのエネルギー源…とでもいえば良いのか…
だからこそ、おまえさんはこっちの世界に戻る事が出来た。
それもひかりと一緒にじゃ。」

「でも、あれはひかりが……」

「その通りじゃ。
ただ、そこにエネルギーがあったからこそ出来たんじゃと思うがな。」

わかるようなわからないような…
じいさんの言わんとすることはわかるような気がするんだがどうにもややこしくて、なかなか要約出来ない。



「じゃあ……俺が本来の世界に戻ってきた事で、俺は定着して……カリスタリュギュウス流星群のパワーは消化されたってことなのか?」

「どうじゃろうのぅ…
なんせ、今までに経験したことのないケースじゃから、わしもはっきりとは言えんが…
ただ、おまえさんはひかりの世界に確実に存在しておった。
そのことで、また事情は変わったと思うんじゃ。」

「どういうことだ!?」

「さてな…わしにも実はよくわからん。」

面倒臭そうにそう言うと、賢者のじいさんは大きな口でケーキを頬張った。