「わぁ!シュウ!ひさしぶりじゃない!」

「あ、あぁ…久し振り。」

店に入ると、ちょっとひいてしまう程の満面の笑みと甘い声でここあちゃんが出迎えてくれた。
思った通り、ハヤト君はその様子に面白く無さそうな顔をして、さっさと店の奥に引っ込んでしまった。



「ここあちゃん…大丈夫なのか?」

俺はそう言って、ハヤト君がついさっきまでいた場所を視線で示した。



「大丈夫だって!
でも…シュウの方こそ大丈夫なの?
また、ひかりさんは一緒じゃないなんて…」

「俺達は全然大丈夫さ。」

「たいした自信なのね。」

「……だって、ひかりは俺一筋なんだもん。」

その言葉に、ここあちゃんは急に噴き出した。



「シュウ、そんな風に油断してると、いつかびっくりすることがあるかもしれないわよ。」

「ひかりはここあちゃんとは違うんだよ。
ひかりは本当に晩熟で純情で…俺以外の男とはほとんど喋ったことさえないんだから。」

「うっそー!
今時そんな人なんているの!?」

「ま、確かに滅多にいないとは思うけど、ひかりは本当にそういう奴なんだ…」

「まぁ……ご馳走様!
そんなひかりさんが可愛くて仕方ないって顔ね!」

その通りだ。
好きな女から一途に想われる以上に幸せなことがあるだろうか。
ひかりは常に俺しか見ていない。
今までつきあった男はもちろんのこと、仲の良かった男友達さえいなかったって言ってた。
俺はひかりにとってのオンリーワンであり、ナンバーワンなんだから、そんなひかりがいじらしくて可愛くてたまらない。
ひかりはきっと一生俺のことだけを見てくれると思う。
そういうのを重いと感じる奴もいるだろうけど、俺は重いなんて思ったことはない。
そんな風に想ってもらえることが幸せであり、俺の誇りだ。



(きっと、ここあちゃんにはわからないだろうなぁ…)



「何なの、その笑い…
気持ち悪~い!」

「別に良いだろ!
……そんなことより、今日はなにかおすすめのケーキってある?」

「今日はね、新作のケーキがあるのよ!
二日前に出したばっかりなんだけど、すごく好評なのよ!」

そう言いながら、ここあちゃんはショーウィンドウの中の白いケーキを指差した。