(お腹減ったなぁ…
それに、トイレも行きたい…)



さっきからお腹はギューギュー鳴りっ放しだった。
今夜は夕食を食べてないんだから当たり前。
この部屋は一応客間だから、食べるものは置いてない。
シュウと顔を合わせるのがいやだからなんとか我慢はしてたけど、トイレはさすがに我慢出来ない。
もう夜中だし、シュウも寝てるだろうから大丈夫かな…そう思いながらも、こっそりと部屋を出た。
そしたら、シュウはまだリビングにいて、本を読んでたみたいだけど、すぐに私のことに気付いて顔を上げた。



「ひかり、大丈夫なのか!?」

シュウは立ち上がり、私の傍に来ておでこに手をあてた。



「熱はなさそうだな。
頭の痛いのはどうだ?」

「あ……あぁ、それなら…」

大丈夫と言いかけた時、タイミングの悪い事に私のお腹がぎゅーっと鳴いた。



「……おかゆ、作ってやるよ。」

シュウは失笑しながら、私の頭をやさしく撫でた。
子供扱いされてるみたいだけど、それは決していやな感触ではなくて…むしろ、なんだか嬉しい。


「あ、良いよ。
確か、パンがあったし…」

「……良いから、座って待ってろって。
すぐに出来るから。
あ、何か飲むか?
寒くないか?」

シュウは、私の手を取って、ソファに座らせ、ひざ掛けをかけてくれた。



なんで、そんなに優しくしてくれるんだろう?
……違う…そうじゃないな。
シュウはいつも優しい。
口は乱暴だったりもするけど、シュウは肝心な時にはいつもとても優しい。
でも、そのことが私には余計に辛く感じられた。
どうせなら嫌われて冷たくされた方が良い。
そしたら、私もシュウのことをきっぱり諦められるかもしれ……いや…やっぱりそんなの無理。
きっと、それでも諦められるなんてことはないと思う。
私はそこまでシュウにぞっこんなのに…それなのに、どうして…
そんなことを考えると、やっぱり悪いのは私で、浮気されても仕方ないような気がして来た。



「シュウ…おかゆじゃなくて…
ピラフかオムライスにして…」

「え…こんな夜中に…大丈夫か?」

シュウは驚いたような顔で私をみつめた。



「……うん。
もう良くなったから。
あ、そうだ!トイレいかなきゃ!」



こういう時はいっぱい食べなきゃ。
食べたらきっと元気になれる。
私は、これから変わるんだもの。
シュウのため…私達のために…これからもずっと一緒にいられるようにするために、私は変わるんだから!
私は個室でそんな決意をしていた。