扉を閉めた瞬間、私の瞳から大きな涙が零れ落ちた。
泣いちゃ駄目。
シュウにあやしまれる…そう思って我慢してたのに、一粒だけ、堪えきれない涙がこぼれた。



(どうして…?
シュウはどうしてあんな嘘を吐いたんだろう?
何もやましいことがなければ、あんな嘘吐く必要がない…それって……)



そうだ…
きっと、シュウはここあちゃんに誘われたんだ。
ここあちゃんにとったら、シュウなんてただのつまみ食い。
ここあちゃんが本当に愛しているのはハヤト君なんだもん。



シュウはどう答えたんだろう?
俺にはひかりがいるからってちゃんと断ってくれた?
……そうじゃないよね。
だったら、あんなうれしそうな笑顔を見せるわけないし、ここあちゃんの店に行ったことを隠すはずもない。

きっと、OKしたんだ。
二人はあの時、密会の約束をしてて…
きっと、話が決まって、それでシュウはあんな嬉しそうな顔を…



私の頬を二粒目の涙が伝った。
涙は苦い…苦い涙は悔し涙だって言うけれど、私はここあちゃんに嫉妬してるの?
適うはずなんてないのに…
私とここあちゃんは月とすっぽん。
ライバルにもなれる相手じゃない。



それに、元はといえば私が悪いんだ。
私がシュウに満足させてあげられないから悪いんだもの。
以前、漫画か小説で読んだ事がある。
男の人は身体と心が別々なんだって。
つまり…好きじゃない女の人とでもそういうことが出来るってことで…
相手はあんなに可愛いここあちゃんなんだし、きっと楽しくスポーツをするようなそんな感じなんだ。
私が悪いんだから…そう思う気持ちは確かにあるから…一回くらいなら気付かないふり…
……出来るかな?
頑張ればなんとか乗り越えられるかな?
でも、シュウがここあちゃんの身体の魅力にハマってしまったら…
何度も何度も私に隠れて会うようになったら…
そうなったら、いくらシュウが本当に愛してるのは私だって言ってくれても、やっぱり無理だ。
私にはきっとそんなんこと辛過ぎて耐えられない…
でも、私はもう元の世界には戻れない…
ずっと、ここにいなきゃならないし、ここに来たのだってシュウのためだったのに、そんなことになったら、私は何のためにここに来たんだかわからない…



(どうすれば良いんだろう…)



私には相談出来る人もいない。
そう思うともう何粒目だかわからない程の涙がこぼれ、どうにも止めらなくなっていた。