(酷い…!酷いよ、シュウ…)



私は公園のベンチでぽろぽろと流れ落ちる涙を拭った。
拭っても拭っても、涙はとめどなく溢れて来る。



シュウは、どこかにでかける時はたいてい行き先を告げてから出て行く。
でも、今日は違った。
今までにも何度かそんなことはあったけど、そんな時は友達とダーツバーにいたり、買い物をしているみたいだった。
だけど、今日は、なんだかいつもとは様子が違うような気がして…
どこがどう違うかっていうのは難しいけど…とにかく、なにかおかしい気がした。
胸騒ぎとかカンみたいなものかな…

そんなのはただの気のせいだって私は自分に言い聞かせたけど、時間が経つにつれてどうにも落ち着かなくなって…
私は、ここあちゃんの世界に向かった。
まさかという気持ちはありつつも、私の足は自然とそこへ向かっていた。
シュウがそこにいるはずなんてない。
それを確かめたら私も安心出来るし、シュウの好きそうなケーキを買って帰れば良いだけのこと。
そう考えて曲がり角を曲がった瞬間、店の前で仲良さそうに話すシュウとここあちゃんを見てしまった。
二人はまるで恋人同士みたいに密着して楽しそうになにかを話し、そして、シュウは普段めったに見せることのないような笑顔をここあちゃんに向けた。
私は、あまりのショックにその場から逃げるように駆け出した。
心臓が激しく脈打って、足ががたがた震えて…涙がぽろぽろこぼれて…
そして、どうにかここに辿りついた。



ひとしきり泣いて…私の高ぶった感情はやっと少し落ちついた。
近くの自販機で温かいお茶を買って、ゆっくりと流しこむ。
失った水分を補給し、身体の中が温まって来ると、ようやく私の気持ちは落ち着きを取り戻した。



(こんなこと、きっとなんでもないことなんだ。)



私が見たのは、ただ仲良さそうに話すシュウとここあちゃんの姿で…
別にシュウが浮気をしていたのでもなんでもない。
それに…シュウは、嘘を吐いたわけでもない。
ただ、ここあちゃんの所に行く事を黙ってただけ。
だけど、それだって、ただケーキが食べたかっただけなのかもしれないし、いくらここあちゃんがイケメン好きだって言っても、まさかハヤト君がいる店のまん前でシュウを誘惑なんてするわけない。
もしも、こんなことを誰かに相談したら、きっと笑われる。
そのくらいなんでもないことなんだ。

私は自分に言い聞かせるように、頭の中で今日の状況を思い出しながら整理した。