「なんだよ、ひかり…
元気ないな。」

「そ、そんなことないよ。」



口ではそう言ったけど、ひかりの様子は明らかにおかしい。
やはり、外の世界と連絡が取る手段がないとわかったことがショックだったんだろう。



ひかりはよく言う。
俺と一緒にいられるなら、それだけで満足だと。

だけど、そんなのは嘘だ。
本当は元の世界の戻りたいに違いない。
それは、ごく当たり前の感情なのだから。
俺には家族はいないようだけど、想像するだけでも家族と離れるのは誰にとっても辛いことだと思える。
たとえば、見知らぬ外国へ行くだけでも寂しいと思う。
それでも、今ならメールや電話で連絡が取れるし、いざとなればどちらかが移動して会うことだって出来る。
だけど、ひかりの場合はもう一生会えることはないだろうし、それどころか連絡さえ取れないのだから。

こっちに来てからしばらくは、俺ももうどうしたら良いのかわからない所まで来ていた。
毎日泣いてばかりで、食べる事も眠る事もせずにどんどんやせ細っていくひかりに、俺はなにをしてやれば良いのかわからなかった。



ひかりの精神状態がかなり悪かったある日の夜中、ひかりが俺のベッドに潜り込んできた。
なにか恐ろしい夢を見たと言って、ひかりの身体はぶるぶると震えてた。
俺は、大丈夫だと慰めながらひかりの身体を優しく抱き締めた。
しばらくして俺がうとうとしていると、ひかりは俺の腕の中でなにかごそごそと動き出し、俺に覆い被さるようにして唇を重ねて来た。
とてもぎこちないキス…
ひかりが自分からそんなことをするのは初めてのことだっかたら、俺は最初は夢かと思った程だった。
しかし、それは夢ではなく…その時、ふと触れたひかりの身体は何も身に着けていなかった。



「ひ、ひかり…どうしたんだ…」

「シュウ……」

ひかりはそれ以上何も言わなかったが、その潤んだ瞳が伝えていることは俺にははっきりとわかった。



「……本当に良いのか?」

ひかりはゆっくりと頷いた。



こんな時に本当に良いんだろうか?
ひかりは情緒不安定になっていて、自分でもよくわからないままにこんなことをしているのではないか?
……そう思い躊躇う気持ちはあったけど…



だけど、ずっと押さえて来た俺の感情はもう止められなかった。