「全く関係ないとは言えんかもしれんが…たいした効果はないじゃろうなぁ…
それよりもむしろ書き手としての資質が重要じゃな。」

「書き手としての……?」

「そう…
おまえさんは、誰か他の人のキャラを動かしてみたことがあるか?」

「ないよ。
だって、そんなに親しい作者さんはいなかったし…
第一、他人のキャラを書くって難しいよ。
口調だったり雰囲気だったりを掴めなかったら、イメージを壊す事になるし……あ…!もしかして書き手としての資質って、そういうこと?」

おじいさんは、私に向かって深く頷いて見せた。



「その通りじゃ。
口調が普段と全然違ってたり、このキャラがこんなことはしないだろう、言わないだろうというようなことをいくら書いてもそれは世界もキャラも動かすことは出来んし、キャラの想いもキャッチすることは出来んのじゃ。」



その話を聞いて、だったら兄さんには絶対に無理だと思った。
まず、兄さんは本はけっこう読むみたいだけどそれは真面目な本だし、自分で何かを書くとしても携帯小説にありがちなくだけたものは絶対に書かないと思う。
ましてや、妹が書いた恥ずかしい妄想話の続きを書こうなんて考える筈がないし、万が一考えたとしても私の小説の雰囲気をそのままに書くなんて、あの兄さんには出来っこない。
さっきは、この世界が元気なのは兄さんが毎日私の小説を読んでくれてるお陰かと思ったけど、それは完結作だからだってことがわかった。
もしかしたら、実際は全く開いてもないかもしれないし、そしたら私の「連絡を取りたい」っていう想いの欠片さえ兄さんには届いてないのかもしれない。
ううん、たとえ開いてても…たとえ届いててもどうにもならない。
手段がないんだもの。
やっぱり、無理なんだ…
外の世界と連絡を取るなんてこと…不可能なんだ…
わかってたことではあったけど、それを思い知らされるのはやはりとても辛いことだった。