「ああっ!」

誰かの叫び声で、俺ははっと我に返った。
誰の声かはわからなかったが、その声の原因はすぐにわかった。
目を閉じていても、瞼を通して明るさが急に増したことがわかったから。



「シュウ!門が動き出した!」

「門が!?」



目を開くと、門がまるで燃えるように煌煌と輝き、その前には見知らぬ女の子がぼーっとした顔で門を見上げて突っ立っていた。
そうだ、確か、これは異世界への門。
でも、なぜ、俺はこんな所に……?



「シュウ、その子を門の向こうへ!
早くっ!」

「え…あ、あぁ…」

なぜだかはわからなかったが、俺は賢者に言われるままにその子の手を引いて門の前に立たせ、そしてその背中を押し出した。
女の子は短い叫び声を上げ、門の向こう側に呆気なく消えた。



「じいさん、今の誰なんだ?
なんだって、門の向こうに…」

「シュウよ……」

賢者は背伸びをして、紙切れを俺の胸ポケットに押し込んだ。



「何なんだ?」

俺が紙切れを取り出そうとすると、賢者がその手を止めた。



「シュウよ…
達者でな…必ず、みつけだすんじゃよ。
おまえの愛する人をな…」

「なんだよ、じいさん。
一体、何のことを……ああっっ!!」



賢者が何も答えず、いきなり俺を門の向こう側に突き飛ばした。