(どうしよう…)



本音を言えば、青木さんに傍にいてほしかった。
だって美幸さんの物語は急展開を迎えて…もしかしたら、そのことがこっちにも影響を及ぼすかもしれないんだから。


どうなるんだろう?
本当に美幸さんはこっちに戻って来られるんだろうか?
そうだとしたら、どの時間に?
もしも、それが今だとしたら…小説の世界に行ってた美幸さんのこっちでの数年間は、一体、どんなことになるんだろう?



(……あ)



そんなことに思いを巡らせているうちに、私は、あることに気が付いた。



(そうだわ…
私が、青木さんとこんな風に親しくなれたのは、元はといえば美幸さんのことがあったから…
……でも、美幸さんが小説の世界に行くことがなくなるとしたら、私は青木さんとは……
いえ、そんな程度じゃないかもしれない。
もしかしたら、青木さんは会社を立ち上げてらっしゃらないかもしれないし、まだイギリスに住んでらっしゃるかもしれないわ。
そんなことになったら、もしかしたら私は、もう青木さんと出会う事さえ出来ないかもしれない。)



それは私にとって最高に辛いことだ。
今の状態はとても居心地が良くて幸せで…
これ以上のことなんて望まない。
ただ、青木さんの傍にいて、何かしら役に立てたらそれで良い。
だけど、もしかしたら、その状態も変わってしまうかもしれない。
青木さんは私の存在なんて知らないまま、時は流れてるかもしれないのだから。



私が書くのをやめてしまったらどうなるだろう?
そしたら、この世界はこのままでいられるんだろうか?
青木さんと離れずにいられるんだろうか?



そんなことを考えながらも、心の底ではわかってた。



(書かないわけにはいかないじゃない。
……青木さんはあんなに美幸さんのことを心配されてるんだから…)



私は、そっと涙を拭い、再びキーボードに指を乗せた。



(あ、そうだ…!)

どうなるかはわからないけど、一応ここまでのことをバックアップを録っておこう。
もしかしたらこれもすべてなくなってしまうのかもしれないけれど…



(あと一息だわ!)

バックアップを済ませた私の指は、また誰かに操られるように勢い良くキーを叩き始めた。