「ど、どうなるんでしょう、野々村さん…
本当に美幸はこっちに戻って来るんでしょうか?」

俄かに緊張感が強まった。
ついに美幸とシュウは門を作動させ、どうやら門は本当に動き出したようなのだから。



「わ、私にもわかりませんが、このままだときっと…」



その時、携帯の着信音が鳴った。
マイケルからの着信だ。



「俺だ。
どうかしたのか?」



マイケルからの電話はすぐに戻って来て欲しいというものだった。
なんでも、亜理紗が、今、事務所の者達と一緒にうちに来ているそうで、今度こそ話をまとめてしまいたいということだった。
だが、今は、美幸の方も目を離せない状況だ。



「マイケル、少しだけ時間をくれないか?
あと少しで良いんだが…」

だが、マイケルの方もやっと亜理紗が合意する気になった今を逃しては、またややこしいことになるかもしれないからと、なんとしても戻って来て欲しいと言い張った。



「……青木さん、後の事は私に任せて、そちらに行って下さい。」

「ですが…」

野々村さんは黙ったままで深く頷いた。



「……わかりました。
では、後のこと…どうぞよろしくお願いします。
片付いたらすぐに戻りますから…」



俺はそう言い残し、すぐに家を飛び出した。
通りに出てタクシーを捕まえた俺は、あることを思い出し、急に不安にかられた。



(そうだ…
シュウはこっちにいなかったことになると賢者は言ってた。
つまり、俺の頭の中からもシュウはいなくなる…
当然、美幸がシュウの世界に行ったという事実もなくなるってことか…!
だったら、美幸がこっちにいなかった間の俺の過ごしてきた時間はどうなる?
そもそも、美幸が戻って来るとしたら、それはあの日…赤い流れ星が流れ、美幸がシュウと出会ったあの日に戻るのか、それとも今なのか?
今だとしたら、この世界はどんな風に変わるんだ!?
……俺は、野々村さんと出会えるのか?)



引き返すべきかとも思ったが、引き返しても何がどうなるわけでもない。
どうしよう…
焦った俺は、タクシーの中にあった名刺の裏に、咄嗟に走り書きをした。



「野々村さんの言うことを信じろ。
彼女の話はすべて真実だ。」と。