(来た……!)



ひかりと賢者の姿をみつけた俺は、思わず木陰に身を潜めた。



(何やってるんだ?
隠れなきゃならないことなんて何もないのに…)

ほんの一瞬ひかりを見ただけで、俺の鼓動は速くなっていた。
数日ぶりに会うひかり…愛しさで俺はどうにかなってしまいそうだった。
大丈夫だろうか…
俺はひかりと顔と会わせた途端に、泣いてしまったり、おかしなことをしてしまわないだろうか?



(落ち付け、落ちつくんだ!
すぐに済む…だから、それまで頑張るんだ…)

俺はそう自分に言い聞かせた。
そして、大きく息を吸いこんでそれをゆっくりと吐き出し、出来る限りの作り笑顔を浮かべた。



(よし、行くぞ!)



「よっ!」

俺は、片手を上げ、陽気に木陰から飛び出した。



「あっ…!
おじいちゃん、酷いじゃない!」

そう言って、今来た道を戻ろうとするひかりの腕を俺はがっしりと掴んだ。



「やめてよ、シュウ。」

ひかりは厳しい顔で俺を睨み、俺の手を振りほどこうとする。



「ひかり…今だけ…ほんの少しで良いから俺の話を聞いてくれ。
これが最後のお願いだから……」

「最後…の…?」

ひかりは抵抗をやめ、ひかりはどこか不安そうにして俺の顔をじっとみつめた。



「ひかり…愛してる…」

「や、やめてよ!」



ひかりとみつめあってた俺は気持ちがコントロール出来なくなって、ひかりを思いっきり抱き締めていた。
こんな風に抱き締めることが出来るのもこれが最後だと思うと、俺は悲しくて…辛くて…寂しくて…
ひかりは俺の腕の中で抵抗していたが、その手が不意に緩んだ。



「シュウ……ど、どうしたの!?」

ひかりが驚くのも無理はない。
俺はとうとう堪えきれずに泣いていたんだから。
どんなに止めようと思っても、もう俺にはどうにも出来なかった。
雅樹のことがあって別れを決意した時よりも、その悲しみは大きくて…男としてのプライドもなにもかもが吹き飛んだ。