(俺は、どうすれば良いんだ…)



部屋に戻った俺は、ずっとそのことを考えていた。
さっきの賢者の話を思い出しながら……







「シュウよ…
門を動かす大きな力はあるにはある。
それは……おまえさんに関する記憶じゃ。」

「俺に関する記憶……?
一体、どういうことなんだ?」

「つまりじゃな…
ひかりの世界にいたおまえさんの記憶を、エネルギーに変換するわけじゃ。
記憶を無くすというのか…おまえさんがひかりの世界にいたこと自体をなかったことにする…と言った方がわかりやすいかのう。」

「なんだ、そんなことか…それなら、何も…」

「シュウ…それがどういうことかわからんのか!?
おまえさんがあの世界にいなかったということは…ひかりにも出会えなかったということなんじゃぞ…」

「な、なんだって…!」

「ひかりの世界でおまえさんが出会った人達の頭の中から、おまえに関する記憶がすべてなくなる。
それだけだけじゃあないぞ。
おまえさんの頭の中からもひかりは消える…なんせ、おまえはひかりと出会わなかったことになるんじゃからな…」

「そ、そんなこと……」







ひかりの心の中から俺がなくなってしまうなんて…いや、それよりも俺の心の中からひかりの記憶がなくなってしまうなんて……考えるだけでも辛い…
今まで俺とひかりが作って来た過去がすべてなかったことになるなんて、そんなこと……



(だけど…
その代わりに、ひかりは元の世界に戻れる…
いや、それだけじゃない。
ひかりは雅樹と浮気をしてしまったっていう罪悪感からも解放されるんだ…
俺を設定で苦しめてるっていう罪悪感も…)



ひかりのことを考えれば、そうするべきだ。



そう思っても、やっぱり俺にはすぐに返事を出すことは出来なかった。
普段からひかりのためなら何でも出来ると思っていたくせに、なんてざまだ…



だけど、ひかりのことを忘れるなんて、俺にとっては死ぬより辛いことだから……