(夢よ…これは夢…)



足ががたがた震えてた。
頭の芯がとろけそうに熱くなって…涙が毀れそうになっていた。
ずっと昔、初めてオペラの舞台を見た時のような…いや、それ以上に心が震えた。
きっと生まれて初めてキスをした少女のような気持ちを私は今感じてるんだ…
キスなんて、今までに数え切れないほどしてきたけれど、今までのものとはまるで違う…
感動で胸がいっぱいで…私はなんともない振りをするのに全神経を注いで頑張った。



青木さんは優しい方だから…
私があんなことを言ってしまったから、その想いに温情をかけて下さったんだと思う。



(ごめんなさい、青木さん…
あんなこと、言うべきじゃなかった…
心の中におさめておくべきだった…
でも、正直に言わないと、青木さんは、亜理紗さんが私に酷いことを言ったのは自分のせいだと思われるから…)



でも、これ以上、青木さんに気を遣わせちゃいけない!
なんとも思ってないふりをしなきゃ…
そう…きっとこれは青木さんにとっては外国の人達が交わす親愛のキス…
なんでもないことなんだから…



忘れてしまった方が良いのかもしれないけれど、忘れてしまうにはもったいない程素敵な夢…



(そうよ……良い夢を覚えておくことくらい、青木さんの迷惑にはならないわ。)



ありがとう、青木さん…
私…この夢を一生忘れない…



私はその想いを胸に刻み、パソコンの前に座った。
すると、すぐにいつもの感覚が流れこんできて…

美幸さんの世界がまた動き始めていることを私は実感した。