(……ん?)

なんだか気分が良かった。
瞼をこすり大きく伸びをして…
俺はその時に気が付いた。
夕食の準備をしようと思ってたんだということに。

慌てて柱の時計を見ると、意外にもまだ4時過ぎだった。
ずいぶん眠ったような気がしたが、まだそんなものだったのかと思った時、窓の向こう側が暗い事に気が付いた。



(おかしいな…まだそんなに暗くなる時間じゃないのに…
雨でも降ってるのか?)



俺はゆっくりと起きあがり、窓の外を眺めた。
やっぱり真っ暗だ…と、いうことは……



(しまった…!)



リビングは明かりがついたままだった。
テーブルの上には弁当が二つ置かれたままで…



俺は足音をしのばせ、二階への階段を上った。
野々村さんの部屋の前で耳を澄ませると、中からはテレビの音が聞こえた。



(起きてるんだな。)



「野々村さん、すみません!
俺、すっかり眠りこんでしまって…」

ノックをし、声をかけたが返事はなかった。



(……まさか!?)



「野々村さん…!大丈夫ですか!!」

何事かあったのかと不安になった俺は、部屋の扉を押し開けた。



「あ……」

俺が部屋に入ると同時に、ベッドにもたれて座っていた野々村さんの目が開いた。
野々村さんはテレビをつけたまま眠っていただけだったようで、俺が乱暴に戸を開けたからその物音で目を覚ましたようだ。



「す、すみません!
声をかけたのですが返事がなかったので…それで、俺…なにかあったのかと…」

「ご、ごめんなさい。
私こそ、知らないうちに眠ってしまってて…
あ、夕飯の準備…!」

「野々村さん…もうどちらかといえば朝ご飯ですよ。」

俺は、時計を指差した。



「あわわわ……どうしましょう!?」

野々村さんは、いつものように慌てふためき、その場から立ち上がった。