「おじいちゃん……
私ね…昨夜、ずっと考えて……それで、やっと決心が付いたの。
私……やっぱり、シュウの所には戻れない。」

「そうかそうか…」

「真面目に聞いてよ!
私、本気なんだから…!」

「……わかっておる。
だがな、人の気持ちほど移ろいやすいものはないんじゃ。
今はそういう気持ちでも、時が立てば気が変わるかもしれん。
それはそれでええ。」

「そうじゃない!
私……一時は、またシュウの所に戻ろうかなんて虫の良いことも考えた。
だけど……シュウの気持ち考えたらそんなこと出来るわけないよ。
勝手に勘違いして……わ、私は雅樹君と浮気してしまったんだもん。」

そう言っただけで、また感情が込み上げて私の瞳が潤んできた。



「シュウはな…それでも、おまえさんのことを嫌いにはならんよ。」

「だから、辛いんじゃない!
シュウは…設定で、私のことを好きになることを決められてるからそうなんだよ。
普通、シュウみたいに格好良い人が私みたいな子を好きになるはずないし、その上、浮気なんかされたら許す筈もない…
だけど、シュウは設定があるから私にどんなことをされても私のことを嫌いになれない…そんなの…そんなの、シュウが可哀想だよ!」

「ひかり…物語のキャラというのはそういうものじゃ。
キャラ達はそれで幸せなんじゃ。
だから、余計なことは考えんでええ。」

「そんなわけにはいかないよ!
私は小説のキャラじゃないんだから!
血の通った人間なんだから!」

感情がほとばしって止められなくなった。
シュウに申し訳ないと思う気持ちが、私を押し潰してしまいそうだった。



(私…なんで、こんな所にくっついて来たんだろう…
私さえここに来なければ、シュウにこんな辛い想いをさせることはなかったのに…
ううん、シュウだけじゃない…雅樹君にもいやな想いをさせてしまった…
私のせいだ…
すべて、私のせいなんだ…
私さえ、ここに来なければ……)