「なんだ、そんなことを悩まれていたんですか。
大丈夫ですよ。
俺の提案した通りになってるんだから、それはあなたのお考えですよ。」

「……そ、そうでしょうか…」

「そうですとも!
だって、あなたはあの時おっしゃったじゃないですか。
美幸の今の状況に追い付いたって…
あなたは、それからすぐにとりかかって下さった。
つまり、まだ美幸の世界では起こっていないことを書かれたわけなのですから、それはあなたのお考えによるものだということになるじゃないですか。」

青木さんの自信に満ちた顔を見ていると、やっぱり青木さんの言う通りなのかもしれないと思えた。
青木さんのおっしゃることは全くその通りだし、私は普段自分で考えてものを書く事が少ないから、その感覚がわからなくなっているだけのかもしれない。



(そっか…そうだったのね…)



青木さんのおかげで、私の気持ちはほんの少し落ち着いた。
だけど、私の書いたものが現実に美幸さんの世界に影響を及したかどうかはわからないし、それを確かめる術はない。
それに……美幸さんと雅樹さんを別れさせることをようやく成功したばかりだというのに、私はまだ書き足りない気持ちがしてうずうずしていた。



「お疲れになったでしょう。
この数日、あなたはほとんどお休みにもなられていない。
どうぞゆっくり休んで…」

「青木さん、私なら大丈夫です。
もう少し書かせて下さい。」

「でも……」

私がそんなことを言ったら、青木さんも眠れない。
青木さんは、私が書き始めてから自分も寝ないで私につきあってくれている。
そのことについては申し訳ないと思ったけれど、それでも私は書くのを止められなかった。



(なぜかしら…
私は、もう書く事はないはずなのに…
……もしかしたらもう美幸さんの世界が動き始めてる…?)



やっぱりどこかおかしな気がした。
でも、その原因は私にはまだわからなかった。