「うまくいきましたね!
美幸にはちょっと可哀想なことになってしまったけど…
まぁ、そのおかげでシュウとまたやり直せる事になったんですから悪くはないですよね。
雅樹も元カノと幸せにやっていけそうだし…きっと、これが最良の方法だったと思いますよ。
それにしても、野々村さん、やっぱりお上手ですね!
俺が言った元カノの出現というキーワードから、こんなストーリーを考えて下さるなんて…
雅樹の元カノがこんなにボロボロの精神状態で現れるなんて、俺は考えてもみませんでした。
でも、そのおかげで、雅樹は躊躇なく元カノの方へ行けたんですよね。
そうじゃなきゃ、もっと美幸と元カノの間で悩んでた筈ですもんね。」

「いえ……わ…私は……」

「野々村さん……どうかなさったんですか?
顔色が良くないみたいですが…体調でもお悪いのではありませんか?
最近、無理をしすぎてたから……」

「い、いえ、そ、そうではなくて…その……」

私は、青木さんにどう言えば良いものかと戸惑った。
だって、私自身、今の状況がよくわからなかったのだから。
その「わからない」ということが、私の不安材料となっていたのだから。



「……どうかしましたか?」

口篭もる私に、青木さんは心配そうな顔を向けた。



「それが……」

私が黙ったままでいると、青木さんを心配させることになる。
だから、とにかくありのままを話してみることにした。
うまく話せるかどうかはわからないけど…



「青木さん……実は、私にもよくわからないんです。
青木さんに言われた通り、私は雅樹さんの元カノを出現させようと考えていました。
でも、それはまだ漠然としたもので、どういう風に登場させるかもどんな人なのかもまるで思い浮かんではいませんでした。
なのに、自分の考えとは別になんだか手が勝手に動くような…いつもの物語にリンクするあの感覚ですね。
あれに似た感覚に陥ったんです。
でも、結果的には青木さんのおっしゃった通り、元カノの出現で雅樹さんと美幸さんが別れることになりました。
正直言って、私は自分で考えて書いたのか、いつものように物語からのメッセージを感じ取ったのかがどうもわからないんです。」

私はとても悩みながらそう話したのだけど、青木さんは意外にもその話に威勢良く笑われた。