「ひかり……落ちついて聞くんじゃぞ。
……すべてはおまえの勘違いだったんじゃ…」

「……勘違い?
勘違いって何が…?」

おじいちゃんはいつもと違って真面目な顔で、話し始めた。
その話はとても衝撃的なもので…
聞いているうちに、私の鼓動はどんどん速くなって…




(嘘……そんなこと……)



「ひかり…
シュウは、どう考えても浮気なんかしとらんのじゃよ…」

「そ…そんなこと…嘘よ!
だって、ここあちゃんはあんなに可愛いしセクシーだし、私なんかとは比べ物にならない程素敵で……」

「確かにそうじゃな。
誰が見たって、おまえさんよりここあちゃんの方がずっと可愛いし、セクシーじゃ。
男なら誰しもああいうおなごにはひかれるじゃろうなぁ…
じゃが、中にはおかしな奴もおってな。
あのここあちゃんよりも、オタクで…可愛くないって程ではないがごく普通で、色気のひとつもないおなごの方が良いという者もおるんじゃ…」

「お、おじいちゃんは知らないだけなのよ!
だって、シュウと一日中一緒にいるわけじゃないでしょ!」

「ひかり…わしはここあちゃんとメル友しとるんじゃが、そんな素振りがあったらすぐにわかるぞ。
ここあちゃんはよほどのことがない限り、店を空けることはないし、夕方にはおまえさんは家に戻っておったじゃろう?
いつ、どこで、どうやって二人が逢いびき出来るというんじゃ?
それにな…ここあちゃんにはもう二度と隼人君を裏切らないという設定もある。
シュウだって…おまえ一筋という設定があるんじゃぞ。
そんなことが出来る筈なかろう…」



おじいちゃんの言葉に私は脳天をがつんと殴られたような気持ちだった。
だったら…本当にあれは私の勝手な勘違い…!?
シュウとここあちゃんは浮気なんてしてないってこと…?
そういえば、私…決定的なシーンを見たと思ったのはつい最近…
あのハイヒールが折れて家に戻ってる時、ここあちゃんとシュウがマンションの前で会ってるのを見たあの日で…
その前はここあちゃんとシュウがここあちゃんの前で楽しそうに話してるのを見ただけだった。
私はあれで勝手に勘違いをして、そのうちどんどん妄想を膨らませ、ありもしないことを現実みたいに思いこんでいたってこと……?
その考えると、血の気が引いていく想いだった。



(それなのに、私は本当に雅樹君と浮気をしてしまったんだ…なんてことを……)



自分のやらかした過ちにやっと気付いて、私はその場で声を上げて泣き出してしまった。