「ひかり…いつ来たんじゃ?」

おじいちゃんは、お茶をすすりながら、いつもと全く変わらない様子で私に尋ねた。



「えっと…さっき。
勝手に入ってごめんね。
鍵かかってなかったから、近くにいるのかと思って待ってたんだけど……もしかして、おじいちゃん…シュウの家に泊まるつもりだったの?」

「なんでわかるんじゃ?」

「だって…それ…」



おじいちゃんが着てたのは私のパジャマだったから。



「あ、そうじゃったな。
シュウの家に遊びに行ったら、帰るのが面倒になって泊めてもらおうと思ってたんじゃ。
だけど、シュウのパジャマはわしには大き過ぎる。
それで、おまえさんのパジャマを借りたということじゃ。」

「そう……
でも…だったら、どうしてここへ?」

「実はな……雅樹が来たんじゃ…」

「えっ!?雅樹君が、シュウの家に…?」

おじいちゃんは深く頷いた。



(なんで?なんで、雅樹君が…?)



「おまえさん、雅樹の家に携帯を忘れてようじゃぞ。
雅樹はそれを届けに来た。
それで……雅樹の元カノのことを聞いて…おまえさんが出て行ったことも聞いた。
それだけではないぞ。おまえさんが、なぜ、雅樹とつきあい始めたのかも全部聞いた。」

「全部……」



携帯を忘れてたことにも、私は気付いてなかった。
雅樹君の家を飛び出してから、あてもなく町をぶらぶらして…
暗くなって来たらなんとなく心細くなって来て、気が付いたら、私はおじいちゃんの家の前にいた。
……それにしても雅樹君の馬鹿!
今更、そんなことを言ってどうするつもりだったのよ。
もうシュウの気持ちは私には向いてないし、そうでなくても、私はシュウの傍にいない方が良いんだし…
言って何がどうなるってわけでもないのに、そんなこと言ってほしくなかった…