「シュウよ…
おまえさんもいろいろと複雑な心境だとは思うが…
とりあえず、ひかりを探してみてはどうじゃ?
雅樹にふられ、ひかりはずいぶん落ちこんでることじゃろう…」




そんなこと…賢者に言われなくてもわかってる。
心配なのも当然だし、今すぐに探しに行きたい気持ちだってある。
だけど……



「シュウ…
ひかりは馬鹿じゃ。
大馬鹿者じゃ。
勝手に勘違いをして…しかも、その対処もどうしようもないもんじゃ。
じゃが……ひかりは、ひかりなりに、なんとかしたいと思ったんではないかな?
おまえさんのことが好きじゃから、なんとか一人で乗り越えようと頑張って…
ただ、それが間違いだっただけなんじゃ…」



本当になんて馬鹿な奴…
ありもしない妄想に踊らされて…
なんで俺を問いたださないんだ!
そしたら、すぐに誤解だってことがわかってこんなことにはならずに済んだのに、どうしてそこで浮気を我慢しようとなんて考えるんだ!?
しかも、なんでそこで男に慣れようなんて考えるんだ?
わけがわからん。
あいつはすごい人見知りで、何度も顔を合わしてるタカにでさえ、まだあんまり話せない。
だから、雅樹に声をかける時だってきっと大変だったに違いない。
勇気を奮い起こして、心臓バクバクになりながら全力で頑張ったに違いない。



(馬鹿野郎!
頑張る方法が間違ってるっつーの!)



怒りと苛立ちと……
そして、それを上回る程の愛しさが俺の胸に込み上げた。



「爺さん、まずは爺さんの家に行ってみよう!
あいつが行く場所っていったらそこしかないだろ!」

「そうじゃな!
よし、行こう!
シュウ、わしをおぶってくれ!」

「えぇっ!?」

賢者は微笑みながら俺に向かって手を伸ばす…
まぁ、確かに、賢者の足では時間はかかるが…



「あぁぁぁ……わかったよ!」

俺は身をかがめて賢者を背中に乗せた。



「じゃ、行くぞ!」

「出発じゃあ~!」

賢者は俺の背中で元気に叫んで片手を上げた。