「おまえ…やけに冷静だな。
ひかりのことが気にならないのか!?
昔の女が現れたら、ひかりの事はどうでも良いってことなのかよ!」

「そ、そんなことありません。
僕だってひかりのことは心配です。
でも……元はといえば、シュウさんのせいじゃないですか!」

「俺の…せいだって?」

俺が声を荒げたせいか、雅樹は顔を上気させそんなことを言い出した。
いくら興奮してるからって、よくもそんな筋違いのことが言えるもんだと俺は心底腹が立った。



「おまえなぁ…」

「シュウさんが浮気なんかしなければ、ひかりだってこんなことには…」

「俺が浮気だって?
ふざけるな!
俺がひかり以外の女を好きになる筈ないだろう!」

俺は苛立ち紛れにテーブルを思いっきり叩いた。



「隠したって無駄です!
僕はひかりからちゃんと聞いてるんです。
あなたとここあちゃんのことで、ひかりがどれだけ傷付いて、どれだけ苦しんだかわかってるんですか!?
僕とつきあったのだって、元はといえばそのことからなんですから!」

雅樹は少しもひるむことなく…むしろ、余計に感情的になってそう叫んだ。



「おまえ、何言ってんだ?
頭でもいかれてるのか?」

「あなたがそこまで往生際の悪い人だとは思ってませんでした!」

「なんだとぉ!」

思わず俺が立ちあがると雅樹も同じように立ち上がり、俺と雅樹は一触即発のにらみあいになった。



「二人共…落ちつかんか。
ほら、座って、座って……
お茶でも飲め。」

睨み合う俺と雅樹の間に賢者が割って入り、俺達を無理に座らせる。



「……どうも話がおかしい。
雅樹よ、ひかりと会った時のことから詳しく教えてくれんかのう。」

賢者はいつになく優しい声を出し、雅樹はその声にほだされたのか、素直にお茶を飲み干すと、ひかりとの出会いを話し始めた。