「ひかり…本当にごめんね。
でも、僕…ひかりとつきあってた間は本当に…」

「もうやめて…!」

「ひかり……」

「……怒ってるんじゃないよ。
私には雅樹君のことを責める資格なんて、ない…」



その通りだった。
元はといえば、シュウの浮気を笑って許せるようになれるように…男性に慣れるために探した相手。
だけど、どんどん雅樹君にひかれていって…
そして、いろんなことを考えてるうちに、私はシュウの傍にいない方が良いんだって改めて気付いたから、その寂しさを雅樹君で埋めようとしただけ。
とても身勝手な…ずるい考えだ。
だから、こんな天罰があたったのかもしれない。



(きっと、そうだ…)



でも…雅樹君に捨てられた今、私は本当の一人ぼっちだ。
そうだ…ここを出て行かないといけなくなったら、私には家もないんだ。
私には泊めてくれる友達もいない…
どうしよう…

悲しいはずなのに、私はそんな現実的なことを考えていた。
雅樹君に捨てられたことがショックなのは事実だけど、私にはこんな現実に目を向ける余裕があるんだと思うと、自己嫌悪に陥った。



「雅樹君…短い間だったけど今までどうもありがとう。
彼女のこと、大切にしてあげてね。」

「ひかり…」

「私のことなら心配しないで。
しばらく友達の所に居候させてもらうことにするから。
それと……今度は、彼女に素敵な名前つけてあげてよね。
……じゃね!」

私は無理に平気な顔をして、雅樹君に手を振った。



もしかしたら……雅樹君が何か声をかけてくれるかもしれない…
「やっぱり行かないで!」って、肩を抱いてくれるかもしれない…


そんな期待もすぐに消えた。
雅樹君は何も言わず……私はそのまま扉を開けて外に出た。