「ひかり、本当にごめんね。
心配かけちゃって…
連絡したかったんだけど、ここ、電話もないし、僕はひかりの携帯の番号も知らないし…」



今まではシュウに隠してた手前もあって、雅樹君には携帯の番号も教えてなかったけど、もうそういう気遣いもいらなくなったんだから、雅樹君に番号教えとかなきゃ…



「ううん…雅樹君が無事だったからもう良いよ。
でも、雅樹君もやっぱり携帯くらい持ってた方が良いんじゃない?
ねぇ、良かったら、明日、見にいかない?」

「……そうだね…」

それは、とても気のない返事だった。
特に携帯が嫌いだとかいうわけではないみたいなんだけど…



「ひかり……実は…僕、君に言わなきゃならないことがあるんだ…」

「え…!?」

何のことだか、まるで予想はつかなかった。
だけど、その時に感じた胸騒ぎはとてもいやなもので…
雅樹君が言おうとしてることが、良くない話だってことはすぐにわかった。



「ひかり……ごめんっ!!」

そう言うと、雅樹君は突然頭を床にこすりつけるように深く土下座をした。



「ま、雅樹君…何?
どうしてそんなことするの?
なんで謝るの?」

「僕……ひかりと付き合えなくなった…」



ツキアエナクナッタ……?
雅樹君の言った言葉が、私の耳をすり抜けた。



どういうこと?
今、なんて言ったの?



「雅樹君…あの…えっと…それって、どういうことかな?」

私の頭は混乱を来たし、私はおかしくもないのにへらへらと笑ってた。



「実はね…ひかりが出て行ってしばらくして…元カノがここに来たんだ。」

「元カノ…?」

「うん……もちろん、別れて…ふられて以来、連絡もしてなかったんだよ。
その彼女が突然来たんだ。
僕もびっくりしたよ…彼女、ものすごく痩せてやつれてたしね…
それで、ひかりに誤解されたら困ると思って慌ててここを出て…」



雅樹君の元カノは、結婚を考えながらつきあってた人にふられ、精神的にものすごく落ちこんでいたとのことだった。
喫茶店等で簡単に済ませられる話ではないと思った雅樹君は、彼女が身を寄せているホテルに行って話を聞いた。
彼女の手首には生々しい切り傷があり、このまま一人にしておくことは出来ないと思った雅樹君は彼女の傍についてずっと慰めていたと話した。