「ひかり…実はこの指輪、ここあちゃんに見立ててもらったんだ。
ひかりにどういうものをあげたら良いのか迷いすぎて、訳わからなくなってここあちゃんに相談したんだ。」

「ここあちゃん的にはあのルビーのが一番好きじゃったらしいんじゃが、ひかりにはモルガナイトのこの優しいピンクが似合うと思ったそうじゃよ。
それで、ここあちゃんはその後もあの指輪のことが気になっておって、その時にひらめいたそうなんじゃ。
お揃いの指輪にひかりと仲良くなれるようにと願いを掛けて、あれを買ったと言うておった。
でも、ひかりはここあちゃんに冷たくしたことでもあるのか?
なんだか、好かれてないような気がするって…ここあちゃんがこぼしとったぞ。」

「そ、そんなことないよ。
……ただ、私の周りにはいなかったタイプだったから…ほら、接し方がよくわからないっていうのか…」

まさか、シュウと関係があるから嫌いだなんて言えないし、私はそんな風に言って誤魔化した。



「なんじゃ…やっぱり、ここあちゃんの思い過ごしじゃったのか…
では、これから仲良くするとええな。
……ここあちゃんはああ見えて友達がいないらしんじゃ。
以前から同性の友達がほしいと言うとった。」

「そうだったのか…
ひかりも友達がいないし、これからはここあちゃんにいろいろと相談すると良いな。
隼人君とは相変わらずラブラブみたいだけど、同性の方が話しやすいってことだってあるだろう?
俺も隼人君にはけっこう本音みたいなものが言えた…
それに、ここあちゃんは俺とひかりのこと、いろいろと親身になって心配してくれたし…
あ……ごめん。」



なにかがおかしい気がした。
シュウはなぜそんなに平気な顔カが出来るんだろう?
自分と浮気してる相手のことを、なぜそんな平気な顔をして…



「ま…考えとくね。
今は正直言って私の頭の中は雅樹君のことでいっぱいで、あんまり友達がほしいとは思わないんだけど…」

その場の空気をぶち壊しのいやみな発言…
言ってしまった後で、私は激しい自己嫌悪に陥った。



「あ、じゃあ、とりあえずこれはもらっとくね!
ありがとう、シュウ!」

ぞんざいな口調でそう言って、私は指輪をポケットに放りこんだ。
その時のシュウの目は、たとえようもなく寂しげで……



(シュウ…どうしてそんな目をするの?)



「じゃ、二人共元気でね!
……って、明日にでもどこかで会ったりして…
すぐ近くだもんね!」

「あ…あぁ、ひかりも元気でな…」



私はシュウの言葉に小さく頷き、そのまま家を飛び出した。
一度も振り向かなかったのは、私の顔が涙でぐしゃぐしゃになってたから。