「ひかり……大丈夫?」

「え?あ…あぁ…大丈夫に決まってるじゃない!
私…ほら、夜型だから朝はどっちかっていうと弱くて…」

無理に微笑みながら、私は雅樹君の用意してくれた朝食に手を伸ばした。

シュウの家を出て、今日で三度目の朝を迎えた。
一度目は、シュウやタカさんが来て、もう無茶苦茶っていうか、なんていうか…



(……呆気なかったよね。)



「……そうか…わかった…」
シュウが言ったのはそれだけだった。
たったそれだけで、私とシュウの五年間は終わってしまった。
普通、そんなに簡単に諦められるもんだろうか?
私のことをなじっても叩いても良かったのに、シュウはそんなことも一切しなくて…



「……そうか…わかった…」



そんな風に言えるのは、やっぱりシュウ自身も私に飽きていた…
そうとしか思えなかった。
飽きたというより、やっぱりここあちゃんの方がずっと良いってわかったってことなのかもしれない。
予想はしていたはいえ、やはりそれは辛いことで……泣き喚きたいような気持ちなんだけど、不思議と涙が出ない。
正直言って、もうなにもかもどうでもよくなってしまったていうのか、消えてしまいたいような…絶望的な気持ちになっていた。
でも、私の傍には、私のことを心底心配する雅樹君がいて…
ここで私が馬鹿なことでもしてしまったら…雅樹君に申し訳なさすぎる。
シュウとの仲がうまくいくようにと利用して、困った時には泣きついてばかりで…それなのに、いやな顔一つせず、私を元気付けようとする雅樹君をこれ以上苦しませることは出来ないから…



(だから、なにがなんでも生きなくちゃ…
今は真っ暗闇に思えるけど…だけど、時が過ぎればこんなことただの思い出に変わるんだから…
そう…きっと少しずつ、前に進んでいける筈…
シュウのことを忘れることが出来る筈…)




「………ひかり!」

「えっ!?」

声をかけられ、ふと見た雅樹君のその顔は、呆れたような顔だった。



「ひかりぃ…やっぱり何も聞いてないんだね。
ほら…着替えとか、荷物とか、何か早めにいるものがあったら、僕が取りに行って来るって言ったんだよ。」

「う…ん……」

まさかとは思うけど、シュウの機嫌が悪くて、もしも雅樹君が殴られでもしたらと思うと、そう簡単には頼めない。
だって、一応、シュウは雅樹君に私を取られたことになるわけだし…
私のことはもう特に何とも思ってなかったとしても、男のプライドみたいなものが雅樹君を許せないかもしれないから心配だもの。