「ありがとう、野々村さん!
じゃあ、早速、考えないと…美幸達が何か事を起こす前に…
えっと…まずはとにかく誤解を解かないといけないですよね?
シュウとここあちゃんの間には最初から何もなくて、それはすべて美幸の誤解だったってことを…」

「それは大切な事だと思いますが……要は、その方法ですよね。」

「あ…そうですよね…
じゃあ、タカっていうシュウの友達…あいつがシュウのことを想って、ひかりに文句を言いに行くことにしたらどうだろう?
そして、本当のことをぶちまける、と。」

「青木さん、それだと誤解は解けないと思います。
まず、タカさんは美幸さんがそんな誤解をしてることも知らないだろうから、シュウさんのことをかばうことはおっしゃるでしょうが、それで終わってしまうんじゃないかしら?」

「なるほど……そうなりますよね。
美幸がそんな誤解をしてることを知ってるのは…いないってことですか?」

私は、ゆっくりと頷いた。



「ですよね。
雅樹は美幸の言ってることを誤解ではなく真実と思ってるわけですから…
と、なると、どうすれば……」

「誤解さえ解ければ事は簡単なのかもしれませんが、それが難しいとなると…
えっと……美幸さんがシュウさんと別れる決意をしたのには、雅樹君の存在は大きいですよね。
雅樹君がいなかったら、美幸さんはこれほど早く決断出来なかったはず…
自分のことを愛し、支えてくれる雅樹君がいなければ…」

「……ま、まさか、彼を事故か何かで殺そうというんですか?」

青木さんがそう言って、私に咎めるような視線を向けた。



そういうことは小説の中ではありがちなことではあるけれど、美幸さんのこの物語は他の小説に比べて登場人物にリアリティがあるというのか、現に美幸さんは元々は私と変わらないこの世界の住人なわけだし、それに関わる他の登場人物達に対してもやはり同じような感覚を持ってしまう。
だから、殺すなんて絶対に無理!



「青木さん…私、そこまでクールなことは出来ませんよ。
ただ…美幸さんにはお気の毒ですが、やはり雅樹君とは別れてもらわないといけないと思うんです。


「もちろんです!
男女の仲というのは、いつどうなるかわからない危うさを持っているものですから、それは自然なことですし…
あ……だったら、良い方法がある!」







「なるほど!
それならうまくいくかもしれませんね。」

私の指は青木さんの案に従って、早速、キーを叩き始めた。