「ありがとう、マイケル。
じゃ、連絡待ってるよ。」

電話を切った時の青木さんの顔は、とても晴れ晴れとしたもので、私は自分の推測が当たっている事を確信した。



「野々村さん、聞いて下さい!
亜理紗のことが解決しそうなんです。
マイケルの奴、詳しいことは教えてくれなかったけど、なんでも奥の手を使ったから解決は間違いないとの事でした。
奥の手っていうのが少々不気味ではありますけどね…」

「そうだったんですか。
それは本当に良かったです!」

「俺もほっとしました。
今回の件では、あなたにも大変な迷惑をかけてしまいました。
でも、もう少しで出ていけると思います。」

「いえ…そんなことは…」



青木さんがうちにいることを迷惑なんて思ったことは一度もなかった。
むしろその逆で、この数日間、私はどんなに楽しかったことか…
亜理紗さんのことが解決することは嬉しかったけど、そうなると青木さんとのこんな楽しい間はもうなくなってしまう…そう考えると、正直言って寂しい気がした。



「いや~、本当に良かった。」

青木さんは、食べかけの朝食に手を伸ばし…
その笑顔は心の底から喜ばれてるように見えた。



「あ……」

不意にそう言って青木さんの手が急に停まり、私の顔をじっとみつめた。



(な、何??)



「野々村さん、さっき、何か話しかけられてませんでしたっけ?」

「え?ええっ!?あ、は、はいっ!そ、そうでした。」

すっかり忘れてた…
ど、どうしよう…って、そりゃあもちろん言わないわけにはいかないんだけど、どうやって話を切り出せば…



「野々村さん…?
どうかされましたか?
何か、話しにくいことなんですか?」

「い、いえ、そ、そうではなくて…
あ、あの…青木さん…良いニュースと悪いニュースがあるとしたら、どちらを先に聞きたいですか?」

青木さんは、きょとんとした顔で私をみつめる。



(ば、ばか!
私ったら、なんてつまらないことを…)



慌てた私は外国の映画によく出て来るそんなシーンを思い出して、口に出してしまったようだ。



「何か良くないことがあったんですね。
野々村さん、話して下さい。」

青木さんの顔から微笑みが消えた。
私は、青木さんの刺すような鋭い視線に耐えきれず、俯いたまま立ちあがった。



「野々村さん…?」

「ちょっと待ってて下さいね。」