ひかりはわけがわからず、おたおたしてはいたが、抵抗もせずおとなしく鏡の前に座っていた。
実は、俺だって内心ではびくびくしてたんだ。
こんなことまでするつもりはなかったんだから。



昨日、ここあちゃんに着いて来てもらって、ひかりに指輪を買った。
いくつか迷い、最終的に、ここあちゃんがこれが絶対一番可愛いってすすめたハート型のモルガナイトのリングに決めた。
それから、タカ達と落ち合い、当日の計画についてみんなで話し合った。
その時に、ここあちゃんが、ひかりには当日新しい服を用意して、さらに美容院に行って髪とメイクをしてもらうようにって言い出したんだ。
服だけならなんとかなる。
それをそのまま着ていくっていうのも、なんとかなるとは思ったけど、美容院まで連れていくとなると明らかにおかしい。
なぜそんなことをするのかときっと問いただされるだろうと思い、俺は無理だと抵抗したのだけれど、せっかくだからきれいにしてもらった方が後々ひかりも喜ぶと言われ、俺は渋々承諾した。
だから、なるべく質問されないようになんでも素早く行動して、やっとここまで漕ぎ付けて俺は心の底からほっとしていた。



(今頃、家の方も大変だろうな。)



材料は昨日タカがここあちゃんから受け取ってるはずだから、今はそれを飾りたてるのに頑張ってる頃だと思う。
後は、帰りだ。
家に帰るまでに、きっとひかりは今日のことをいろいろ聞いてくるだろうから、アキラか誰かを呼び出そう。
たまたま会ったふりをしてアキラとずっと話していたら、ひかりは話に入って来ることはない。



(ひかり…びっくりするだろうな…)



後少しで始まるパーティに思いをはせ、俺はひかりにバレないように俯いて微笑んだ。