「やっぱり、隼人君の作るケーキはうまいのう…
わしも長いこと生きているが、こんなうまいケーキは食べたことがない。」

賢者はケーキをぺろりと三つも食べて、満足そうに頷いた。



「ありがとう、おじいちゃん。
そんな風に言ってもらえたら隼人君も喜ぶわ。
……それはそうと、シュウ…
この部屋、センスはとっても良いんだけど、間違っても可愛いって雰囲気じゃないわよね。
壁の色もクールだし…
どうしよう…全体に大きな花柄の布とか貼ろうかな…
それと、照明も変えて…」

「ここあちゃん、それほど大掛かりなことは無理なんじゃないか?
なんたってひかりには秘密なんだから。
そうだな…当日は、俺が買い物か何かにひかりを連れ出すからその間に出来る程度で良いよ。
買い物もそれほど長い時間は出来ないんだし。」

「出来るってば!
シュウの友達も来るんでしょ?
その人達に手伝ってもらえば、たいがいのことは出来るわよ。
イメージを決めて材料さえ確保しておけば楽勝よ!
ね、シュウ……それはそうと、私達が泊めてもらう部屋はどこ?見せて!」

「え?あ…あぁ…」

ここあちゃんは本気で泊まる気らしい。
俺は全然かまわないけど、ひかりに聞かずに返事してしまったことがちょっと気になった。
あいつは、けっこう人見知りな所があるから。



「ここなんだ…」

俺は、ここあちゃんを客間に案内した。



「わぁ~!思ってたより全然広い!
ベッドは二つなのね。
どうせ使うのは一つだけだけどね。」

そう言って、ここあちゃんは短く舌を出して笑った。



(本当に、小悪魔なんだから…)



「ねぇねぇ、シュウの寝室はどこなの?」

「えっと…ここ。」

俺は、隣の壁を指差した。