「ひかり…もう食べないのか?」

「え…?
ううん、食べるよ。
シュウの作ってくれたごはんはおいしいから、残しちゃもったいないもん!」

シュウに心配かけたくなくて、私は無理に料理を口に運んだ。
おいしいはずなのに、何も感じない…
家に帰ってからも、シュウとここあちゃんのことが少しも頭から離れない。



(おかしいよ。
自分だって同じことやってるくせに。
今日だって、雅樹君とあんなに激しく愛し合って…
……だけど、私はシュウのためにやってるんだもん。
でも、シュウはただ身体の欲求を満たすため…
でもでも、それは私がシュウに応じてあげないからだから、シュウが悪いんじゃない…
なんでだろ…雅樹君とはあんなにうまくやれるのに、シュウとはなんで……
雅樹君よりもシュウの方がずっと好きなのに…どうして…)



「ひかり、また停まってる…
どうしたんだ?」

「え?な、なんでもないって。」

物思いから覚めた私はまた料理に食いついた。
シュウが見てるから、出来る限りの作り笑いを浮かべて、なんとかテーブルの上の料理を食べきった。



「あぁ、おいしかった。」

「ラストスパートすごかったな。
大丈夫なのか?」

「全然、大丈夫!
なにか食後のデザートでもほしいくらいだよ。
そういえば……最近、ここあちゃんのお店には行ってないの?」

言ってしまってから、怖い質問をしてしまったもんだと驚いた。



「え…?
あ…あぁ…
ああいう店に俺みたいなのが一人で行くのもなんだろ?
だから、ずっと行ってないよ。
何?ひかり、ここあちゃんの店のケーキが食べたいのか?」

「う…うん、まぁね……」

「じゃ、そのうちまた一緒に行こうな。」

「……そ、そうだね。」



おかしかった。
さっきのシュウは明らかに動揺してた。

私、知ってるのに…
シュウとここあちゃんが何してるか、とっくに知ってるのに…
何も知らないって思ってるんだね。
私を甘く見てるのか、それともそれがシュウの優しさなのか…



悲しかった。
悔しくて悲しくて…でも、何も言えないことが、ますます私の心を重たくさせた。