「なぁ、どう思う?
俺は、どうしたら良いんだ?」

「そう言われてもなぁ……」



賢者は、俺の言葉に困ったような顔をして窓の外に目を移した。



最近のひかりはますます様子がおかしい。
俺を避けるような態度を取ったかと思うと、やけに馴れ馴れしくしてくることもある。
体調が悪いといって部屋にひきこもったり、腫れぼったい瞼に赤い目をしてる日もあった。
あれはきっと泣いてたんだと思う。
だけど、その理由が俺にはさっぱりわからない。
ただ、幸いなことに、その後、ひかりが男と一緒にいる所を見かけた友達はいない。
タカ達もやっぱりあれはただの友達なんだと言ってくれた。
だが、ひかりは相変わらずよくでかけていて、どこに行ってるのかはまるでわからない。
やっぱり後をつけてみようかと思ったこともあったが、俺にはどうしても出来なかった。
なんだか自分が卑怯な男になってしまうような気がして…いやだったから。
とはいえ、ひかりのことはずっと気になってて…俺は、結局、また、賢者の家を訪ねていた。



「外ばっかり見てないで、何か考えてくれよ。
あんた、一応、賢者なんだろ?」

「一応とはなんじゃ、失礼な!
こういうことはお悩み相談にでも相談した方が良いんじゃないのか?」

「冷たいこと言うなぁ…
あんただって、ひかりとは親しくしてたじゃないか!」

「もちろん、心配はしておる!
じゃが、原因がわからんことには対処のしようがないじゃないか。
……その後、ひかりについて、何かわかったことはあるのか?」

「……ないよ。
ただ、あれ以来、ひかりが男と一緒にいる所を見た奴はいない。」

「そうか、じゃ、やっぱり男の線はなさそうじゃな。
……と、なると…やっぱり、ホームシックみたいなものかのう…」

「……ホームシック?」

「あぁ、そうじゃ。
ひかりもここに来てけっこう長い。
来た当初は様々なことで思い悩んだだろうが、それも乗り越え、おまえさんもほっとしたことじゃろう。
……じゃがな、こういう時期こそが実は危険なんじゃ。
もう大丈夫だろうと思い、以前のようにおまえさんもひかりに気を遣わなくなる…ひかりはこっちの世界に慣れて来てもうあっちには戻れないんだという諦めが出来た反面、そのことをものすごく悲しく感じてしまったりするわけじゃ。」

「……なるほど……」

賢者の言葉には説得力があった。
最近のひかりは、家でもぼーっとして何かを考えこんでるようなことがよくある。



(あれは、元の世界のことを考えてるんだろうか…?)