そう考えて、私はそれからも度々雅樹君と密会した。
だけど、そうしているうちに、私の気持ちはなんだかどんどん雅樹君の方に傾いて行ってるのを感じる…
しかも、幸か不幸か雅樹君もそれは同じみたいで…
……もしかしたら、私はシュウといるよりも雅樹君と一緒にいた方が良いのかもしれない。
やっぱり、シュウは私には高嶺の花だったんじゃないかって思うようにもなり始めてた。



(だけど……)



今まで一緒に過ごして来たシュウとの日々を振り返ると、すぐに答えを出すことなんて出来ない。
シュウと初めて出会った時のこと…
迷子になった時に、迎えに来てもらった時のこと…
兄さんにバレた時のこと…母さんにもバレた時のこと…
兄さんとシュウと私で逃げた時のこと…
そして、こっちの世界に来た頃のこと…



(私……シュウには何度も何度も助けられた…
ものすごくたくさんの幸せももらった…)



思い出せば出す程に、シュウと別れることなんてやっぱり出来ないと思い直す。



(……私にとってシュウはかけがえのない人だもん。
やっぱり別れたくなんてない。
でも、雅樹君のことも前より確かに好きになってる。
だけど、これはそもそもシュウとうまくやっていくために考えたことなんだし……
……私…本当はどっちが好きなんだろう?
これから、一体、どうすれば良いんだろう…?)



自分で自分の気持ちがわからない。
相談する相手もいない。
ここに来て、それなりの時間が過ぎてるはずなのに、私はやっぱり人づきあいがそんなに得意じゃないせいか、友達らしい友達もいないんだもの。
賢者のおじいさんにはいくらなんでもこんなこと相談出来ない。
でも、私一人の胸に収めておくには、この悩みは大きくなり過ぎた。

こんな時、兄さんがいてくれたら…



(……兄さん…助けて…)



心の中でそう叫んだら、堪えきれずに涙が毀れた。